《MUMEI》

お姉さんが翔太くんを連れて、中に入った後、私は洋介さんに先生が何で二股なんて言われるのか、教えてほしい。と目で訴えた。

「参ったなぁ。こんなこと話していいのかよ。」

洋介さんは頭を抱えた。

「・・・ナナさんが高校3年の時、ユウキっていう彼女がいたんだよ。」

洋介さんは淡々と語ってくれた・・・
先生の彼女だったユウキさんとその親友のアイさん、3人はいつも一緒だった。ユウキさんは体が弱く、何度も入退院を繰り返していたが、その年の秋に、入院したまま、卒業できなくなってしまった。2人は毎日のように病院へ通っていた・・・。
ある日、ユウキさんか余命一ヶ月という重病であることを、先生は聞いてしまったそうだ。とても辛くて、一人では抱えきれなくなり、先生はアイさんに打ち明けた・・・。

アイさんが弱った先生を慰めるうちに、先生の心はアイさんに惹かれ始めていた。それでも、余命一ヶ月のユウキさんにそんなことを話せるわけがなく、二人は必死で気持ちを悟られないように、隠した。

だんだん先生は、まるで自分たちはユウキさんが死ぬのを、待っているような・・・そんな風に感じていた。そのことに苦しんで、打ち明けようと決めた日に、ユウキさんは亡くなった・・・。『本当のことを言ってほしかった』という言葉を残して。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫