《MUMEI》

「ご指名有難うございますレイです」

学生時代の交友関係を探って此処まで探し出した。

「……はじめまして。」

きっと貴方は私のことなんか覚えていないでしょうね。

「指、綺麗ですね。指輪が良く栄える。」

あの時、私に笑いかけたのと同じだ。

「 お上手ね。」

嘘ばっかり。
そうやってお世辞を言うのが仕事なんでしょう。

「なんて呼びますか。」




「……礼です。」

「奇遇ですね。同じ名前だ。」

物怖じせずに返す。

「本名なのですね?」

「ええ。」

この香りが感覚を鈍らすのだろう、すっかり暗示かけられたように信じ込まされた。

煙草を取り出すとその動作を観察された。


「……点けて下さらないの?」

そちらに先を向ける。

「お体に障りますよ?」

煙草を取られてしまう。




やだ 私、気付かれたんだわ……

油断した。

恥ずかしい。

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