《MUMEI》 試合を重ねる毎にイライラしていた。 悔しかったんじゃない。 怖かったんだ。 必要とされなくなることが。 練習でもイライラが態度に出ていた。 「止めろよそれくらい!!」 育たない後輩のキーパーに当たっていた。 悪いのはこいつじゃない。 僕だ。 速攻に頼りすぎていた僕だ。 それはわかっていた。 しかし、行き場のないイラつきを隠すことが出来なかった。 「クロ!!今日もランニングするだろ?」 練習後ヤマが言った。 「…うん。」 ヤマが羨ましかった。 自分1人の力で点を取ることができるヤマが。 いつものようにランニングをしていた時だった。 「クロ。最近イライラしてない?」 「…少し。」 ホントはこれまでにないくらいイライラしていたが、恥ずかしさから隠してしまった。 「クロ。サイドの仕事は速攻だけじゃない。」 「…やっぱわかってたか。」 「そりゃあね。だけどさ、サイドの仕事はむしろ点を取ることよりも大事なことがあるんだよ。」 「何?」 「クロはまだハンドボールを知らなすぎる。お前の武器は足だけじゃない。速攻にこだわるからそれが隠れてるだけだよ。」 「…よくわかんない。」 「もっと視野を広げてみな。最初は俺もお前の武器は足だと思ってた。だけど違う。他にももっとすげ〜武器持ってるから!!落ち着いて周りを見てみな。そしたらすぐクロの武器が見つかる。」 「…僕の武器?」 「絶対見つかるから。じゃあ、また明日な。ゆっくり休めよ。」 そう言った後、ヤマは帰ってしまった。 (僕の武器?わかんないよ。教えてくれよヤマ。) そして、また練習試合が決まった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |