《MUMEI》
小部屋
部屋の中にはさらに細かく木の板で仕切られて小部屋が作られていた。
小部屋にはドアがつくべき所にのれんが掛けられている物と掛けられていない物があった。

「のれんがある部屋は使用者がいて、ない部屋は誰も使ってないんだ」

レッカは言いながら狭い通路を歩き出した。

「一部屋に何人くらい入れるの?」

「まあ、大人二人ぐらいかな。この部屋は全部で四十人ぐらいしか入らない。少し北へ行くと、もっとでかい非難場所があるんだけど。あっちはもういっぱいみたいだ」

「……何か対応に違いがあるの?」

「んー、小部屋がちゃんとした部屋ってことかな。ここみたいに木の板で軽く仕切っただけじゃなくて、ちゃんと天井までコンクリートで仕切られてる」

「ふうん」

羽田は説明に頷きながら天井を見上げた。
三メートルぐらいはあるだろうか。
設置された蛍光灯は煌々と部屋中を照らしている。
そして視線を通路の先へ向けると、壁に大きなモニターが設置してあることに気がついた。
画面には現在時刻が表示されてある。

「あれは?」

凜がモニターを指差した。

「ああ、あれは何か新しい情報が入った時に使うんだ。外に出ていいとか、ダメとか。で、あっちに自販機コーナーがある。パンとか軽食が食える。その他必要物資は定刻に送られてくるんだ」

「トイレとかは?」

「小部屋の中にユニットバスがある」

「へー、すごい」

羽田は感心して頷いた。
やはり常に身近に危険があると、緊急時の備えも違うらしい。
レッカは一通りの説明を終えると、のれんのかかっていない部屋を選び、中へ入った。

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