《MUMEI》

海南のディフェンスに隙が見えない。


(パスが出しづらいな…)


ポストをがっちり固められてる。


阿久津は僕からのパスを取るため、僕側の方にいる。


しかし出せない。


仕方なく、ヤマへ。


攻め手がない。


翔太がロングシュートを打つが止められる。


「へいへいへい!!!」


海南の左サイドが走っていた。


速攻だ。


誰もが1点覚悟したが…


相手サイドを追いかける男が1人いた。


僕だ。


試合中ずっと走っていた僕は、敵味方合わせ、一番の運動量だっただろう。


1点を阻止するため、走る。


足がつりそうだ。


しかし、ダッシュで勢いをつけたまま、飛ぶ。


僕の右手にボールが吸い込まれた。


「カットした!?」


海南の右サイドとポストも追いかけてきていた。


赤高は僕以外戻って来ていない。





逆に好都合。


(落ち着いて、周りを見ろ)


カットしてから、パスを出すまでの一瞬の間に、コート全体を見渡していた。


1人。


ディフェンスが離れている、絶好の位置にいるのが見えた。


「ヤマ!!!」


パスを出す。


ディフェンスは取れない。


「でかしたクロ!!!」


(この1本は…外せない!!)


ゴール右下の隅へ…
ヤマのシュートが決まった。

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