《MUMEI》

「1点差だ!!!」


会場はこの試合に沸き上がっていた。


しかしその一切の音が、僕の耳には入らなかった。


「ピピピ!!」


審判の笛がなった。


「クロ!!!」


その場に倒れ込んでいた。

皆が駆け寄って来る。


「クロ大丈夫か!?」


「…った。」


「は?」


「足つった。」


「なんだよ焦らせんな!!」


「わり…」


ヤマと阿久津につれられ、ベンチへ戻る。


「おい!!集中しろよ!!」


「はい!!」


残り時間は15分を切っていた。


ヤマの突破が冴える。


士気が上がっていた。


(まずいな…)


恭介はこの状況を分析していた。


(あのサイドのせいで、向こうの士気が上がっているのに対して、こっちは逆に速攻を防がれた上に点を取られた。気持ちが切れ始めてる…)


しかし…


恭介自身が一番気にしていた。


『自分のパスが失敗だったのだと。』


しかし、それは、普段なら間違っていたパスではなかった。


取れるはずのないパスを取られた。


長い間経験を積んでいた恭介は、予想外の出来事に動揺していた。


その証拠に、ヤマトのシュートに反応が出来ていなかった。


残り時間10分となったところで、赤高は同点に追い付いていた。

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