《MUMEI》

「太一によろしく!」


「うん、またね〜」


千夏に手を振りながら体の向きを変えて、駅に向かった。


「はぁ〜、なんか飲みすぎたかも・・・」


一人で呟きながら、ふと後ろが気になって振り返る。





なんでもないか・・・


そして、いつも通り電車に乗った。



電車に揺られながら、佐久間のことを考えていた。



ただの友達・・・


いや、ただの友達じゃないわ・・・


何度も寝た、仲の良い友達・・・


友達じゃないわね。


割り切った関係・・・


なら尚更、彼女のことを言って欲しかった。


言って欲しい?


私は太一に言って欲しくなかった・・・


なんで?




プシュー


電車のドアが開き、少し足元をふらつかせながら降りた。

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