《MUMEI》 コンコン ドアを叩く音が聞こえた。 上原さんだ・・・ そっとドアを開けると上原がニコニコした様子で立っていた。 「あの・・・忘れ物って・・・」 「後で渡すよ。それより寒いから部屋に入れて!」 上原はとっても寒そうな顔をして言う。 「え・・・部屋の中ですか?」 「もう凍えそう!」 上原は無理やりに部屋に入ろうとしてきた。 「ちょっ、ちょっと待ってください!部屋の中は汚いので・・・」 そう言って上原を外に押し戻すと、 「せっかく寒い中忘れ物を持って来てやったんだぜ、入れろよ」 上原の口調は少し乱暴になり強引に部屋へ入ろうとする。 「すぐって言ったじゃないですか!」 私も怖くなり、絶対に入れてはならないと外に押し出す。 「すぐだから入れろよっ」 上原は少し大きな声を出した。 「いやです!それより忘れ物って何ですか?」 全身の力を込めて上原を部屋に入れまいとしながら聞いた。 「忘れ物?それはこれだよ」 と、上原が出した透明のビニール袋の中には、失くしたと思っていたリップやハンカチ・口紅まであった。 「これっ!?!?」 「ふふふ、失くしたと思ってた?」 そう言って上原は部屋に強引に入ってきた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |