《MUMEI》

最後のタイムアウトを取り、


出場する準備をした。


「…行けんのか?
クロ?」


「大丈夫すか?
クロさん?」


「余裕。」


(…あ〜。


やっぱコートの方がいいわ。


ギャラリーが多いのにベンチなんてつまんないし。)


「阿久津。」


「あ?」


「お前にパスは出せない。」


「は!?」


「逆に行って。
その方がやりやすい。」


「邪魔ってことかよ。」


「違うって!!
いいから頼んだ!!」


タイムアウトが終わった。


時間が足りなくて阿久津にちゃんと説明が出来なかったけど…


頼んだぞ。


赤高からのボール。


とにかく時間がない。


僕にボールが回ってきた。


阿久津は予定通り、
逆サイド側に行ってくれた。


(ここしかない!!)


ワンフェイク入れる。
そしてヤマに渡す。


それがこれまでのパターンだったが…


ワンフェイク入れた後、
パスフェイク、
そしてワンドリ。


外へ抜く。


(ここで1対1!?
でもこいつのシュートなら止めれるはずだ!!)


それが、


恭介の頭に浮かんだシナリオだった。


当然僕にシュートを打ちづらくさせる為、


1枚目のディフェンスは外側へ僕を追い詰める。


それにより…


1枚目と2枚目のディフェンスの間に大きな穴が空いた。


次の瞬間。


僕の手にボールはない。


大きく空いた穴へ向かい、
ヤマが走って来ていた。


その穴から、
ヤマがシュートを…


「!!」


打つはずだった。


ディフェンスファールがなければ。


「ピー!!」


審判の笛が鳴る。


当然7メートル。


「頼んだ。」


「ああ。」


残り時間10秒。


最後の7メートル。

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