《MUMEI》

「大丈夫?」


佐久間は私の上半身を隠すように布団をかけてくれた。



「とんだヒーロー気取りだな」


その言葉を聞いて佐久間は振り返り、


「うえはら・・・」


と驚いたように呟いた。


「そ、俺。ハハハハハ」


佐久間に一撃を食らわされた上原は、床に倒れた状態で愉快そうに高笑いする。


「知り合いなの?」


私が佐久間に聞くと、


「高校時代の同級生・・・」


とだけ言った。


その佐久間の様子に上原は相変わらず愉快そうに、


「もっと言うことあるんじゃねぇの?」


と、悪態をついている。


「もっとって・・・何?」


不安になり佐久間に聞くが、


「なんでもないよ。こいつが勝手に逆恨みしてるんだ」


としか言わない。


「逆恨み?こいつは人殺しなんだ、そしてお前も佐久間のせいで被害者になるところだったんだぜ!」


と上原は私に向って言う。


「どういう意味?」


私の問いに佐久間は黙ったままで、その代りに上原がしゃべり続ける。


「俺が助けてやろうとしてたのに、無視するから・・・可哀そうな愛加ちゃん」


と、薄気味悪く上原は笑った。

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