《MUMEI》

しばらくして警察がやってきた。


「さくま・・・」


上原は佐久間を睨みつけた。


「ここに来る途中に連絡したんだ・・・」


そして上原は取り押さえられて連行されて行った。






「大丈夫?」


佐久間はそう言って震える私を抱きしめた。


「なんで・・・?」


「さっき変な電話がかかってきて・・・もしかしたらと思って来てみたんだ・・・」


佐久間はここに来た経緯を説明する。


「そうじゃなくて・・・」


私はまださっきの恐怖から抜け切れず、うまく言葉を発することが出来ない。


「上原さんが・・・」


佐久間は私をもう一度抱きしめて言った。


「俺のせいで・・・愛加にこんな思いをさせてしまって・・・ごめん」


私はそれを聞いて言葉が出なかった・・・


「本当にごめん・・・」


佐久間は何度も謝る。


そして私はやっとの思いで聞いた。


「佐久間さんのせいなの?」


佐久間は何も言わずに私を力強く抱きしめる。


しかし私は佐久間を突き放した。


「佐久間さんに会わなければ、こんなことにならなかったってこと?」


それに対し佐久間は、


「そうかもしれない」


と、一言答えた。


「何よそれっ!全部全部、佐久間さんのせいなのね。佐久間さんなんかに関わったからっ・・・ウッ・・・ウッ・・」


恐怖と緊張とで高ぶった気持を抑えきれずに、最後は涙になった。


「本当に怖かったの・・・本当に・・・」


「愛加、ごめん・・・」


佐久間がもう一度私を抱きしめる。


「離してっ!」


私は佐久間の腕を払いのけた。


「ひどいっ!!全部、佐久間さんのせいだったなんてっ!!佐久間さんの顔なんて二度と見たくないわ!さっさと出て行ってっ。出て行ってよ・・・グスッ・・・ウッ・・・」


私の言葉に対し佐久間は何も言わず、黙って部屋を出て行った。

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