《MUMEI》 ◇◆◇ 遥かに望む大内裏。 変わらぬその風格は、厳かな風情を纏っている。 草薙は毎日のように訪れているが、咲弥にはやはり珍しいらしく、彼女は光を帯びた瞳を向け見とれている。 ふわり、と微風が吹き、咲弥の長い髪を揺らした。 あまりの日和に黒蝶が思わず欠伸をすると、草薙がそれを咎めた。 「‥‥黒蝶」 「ん? ああ、悪い悪い‥」 黒蝶は締まりのない口調で言い、再び長々と欠伸をした。 草薙は呆れたように溜め息をつくと、反対側に目を向ける。 咲弥が実に楽しげな表情をしているのを見て、草薙は安堵した。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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