《MUMEI》
割れた花瓶
その数時間後、太一が部屋にやってきた。


「愛加・・・」


「太一・・・どうして?」


「佐久間さんがさっき俺の部屋に来て・・・愛加の側に行ってくれって」


太一はそう言って私を抱きしめる。


「例の変な手紙も上原ってやつの仕業だったんだろ?」


私は黙ってうなずいた。


「佐久間さんを恨んでたらしいな・・・」


「そうみたい・・・全部、佐久間さんのせいだって・・・」


思い出すだけで体が震える。


「俺、当分はここに住むから安心して」


「ありがと・・・」


太一に抱きしめられ、肩越しに赤い花瓶が割れているのが目に入った。


さっき壊れたんだ・・・


この花瓶と同じように、私と佐久間さんも終わりなんだわ・・・

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