《MUMEI》

その晩、刑事からの話を太一に報告した。


「会社の先輩がストーカーなんて怖いな。気付かなかったの?」


「全く・・・」


職場での上原は普通の先輩だった。


「佐久間さんも大変だな。そんな女を奪ったくらいで何年も根に持たれてさ」


たしかに佐久間さんも被害者・・・


「でも、それだけのことをしたのかも!」


やはり佐久間のせいで、こんな目に遭ったと思うと許せなかった。


「それは当事者しか分からないことだし、考えるのはよそうぜ」


「そうだけど・・・」


それでも、なぜか気になった。


「それよりさ、引っ越さないか?」


突然、太一が提案した。


「愛加もこの部屋にはいたくないだろ?」


たしかに今日一日部屋にいるだけで、何度もフラッシュバックがあり嫌な思いをした。


「俺のマンションも佐久間さんがいるし・・・。どうせなら引っ越して一緒に暮らさないか?」


「一緒に・・・?」


「ていうか・・・」


そう言いながら太一は、正座をして真面目な顔をした。


そして、やたらとモジモジしながら・・・





「俺と結婚してください」


突然プロポーズをした。

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