《MUMEI》

夕方、私は大西課長に連れられ、会社近くのイタリア料理屋にいた。


「私はスパークリングワインが好きなんだけど・・・佐藤さんは飲める?」


大西課長に聞かれ、


「大丈夫です」


と何も考えずに答えた。





大西課長は料理をオーダーし、メニューを閉じると、いきなり本題に入った。


「今回は大変だったわね」


「あ・・・はい」


「上原君はクビが決定したから安心して。でも・・・もし佐藤さんが転勤を希望するなら言ってちょうだい。あの職場じゃ思い出すかもしれないでしょ?」


転勤なんて考えてもみなかった・・・


「それに・・・また上原君に狙われちゃまずいしね」


たしかに上原の知らない場所に行きたくはある。


「あ、でも素敵な彼がいるから大丈夫かしら?」


大西課長はクスッと笑顔を作った。


「彼・・・ですか?」


「警察の方から聞いたの。上原君に襲われそうなところを恋人が間一髪で現れて助けたってんですってね」


「あぁ・・・」


佐久間さんのことだ・・・


「あの人は恋人でもなんでもないんです…」


「そうなの?前にフランス料理を一緒に食べてた彼じゃないの?」


私は大西課長の言葉に耳を疑った。


「えっ?なんで・・・」

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