《MUMEI》

◇◆◇

「───────」

 再び朱雀門前に戻ろうとした、刹那。

 咲弥の身体が、ゆらり、と傾いた。

「咲弥っ?」

 目を丸くする黒蝶よりも先に咲弥を受け止めたのは草薙だった。

 咲弥は倒れる事なく、彼の腕に収まる。

 何が起きたのか分からないといった様子で、目をしばたかせている。

 黒蝶はそれを見て僅かに表情を曇らせた。

「なぁ草薙、咲弥どうしたんだ‥?」

「‥‥お疲れになられたのだろう」

 普段出歩かない姫君が、何時までも立ち惚けていたのだから無理はない。

「木陰に連れてくか?」

「‥‥ああ、それがいい」 

 草薙は咲弥を支えるようにして側の木陰へと誘う。

◇◆◇

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