《MUMEI》 琴子のメールには、最後に、俊彦と『もう一人』にも同じ内容のメールを送ったとあった。 翌朝。 私は『クローバー』の厨房で、昨日『花月堂』でもらった栗の甘露煮を使ってパウンドケーキを焼いた。 第一候補は、抹茶と栗だが、第二候補として、胡麻と栗のパウンドケーキも焼いてみた。 それを、工藤一家の試食用と、孝太へ渡す用の二種類に分け、アルミホイルで包んだ。 その時。 厨房の隅にある椅子に置いておいた携帯が鳴った。 (まだ、早いよね?) 昨日、琴子のメールにあった『もう一人』は、今朝、私に『クローバー』に着いたら連絡をすると言っていたのだが… 時計を見ると、約束の時間より三十分近く早かった。 (何かあったのかな?) 「もしもし」 《蝶子? ごめん。もう来ちゃった》 「え?」 私は携帯を持ったまま、ホールに出た。 窓の外には、確かに 《ごめんね、入れてくれる?》 電話の声の主が 麗子さんが手を振っていた。 琴子のメールには 『兄さんが、蝶子と麗子さんに話したい事があるって言うから、二人でアパートに行ってくれない?』 とあったから。 前へ |次へ |
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