《MUMEI》 職業病孝太は呆れながら、私達が花を飾った折りたたみのテーブルの上に、コーヒーを並べた。 「…ところで、何よ、それ!」 麗子さんは目の前に座った孝太を指差した。 孝太は不思議そうな顔をしていた。 (何か、変かな?) 孝太は、心配していたけれど、痩せてもいなかったし、顔色も良かった。 ちゃんと風呂にも入っているらしく、臭いも気にならないし、ヒゲも剃ってあった。 『私から見れば』、まったく問題は無かった。 多分、孝太も同じだったと思う。 しかし…麗子さんは 「あ〜、もう、我慢できない! 蝶子、手伝って!」 そう言って立ち上がった。 私は、とりあえず、言われるままに麗子さんを手伝った。 数分後。 「ふ〜、スッキリした〜」 麗子さんは、満足そうに孝太を見つめた。 麗子さんは、孝太の 前髪の長さと、えりあしが、どうしても気になったらしい。 『職業病よね』と麗子さんは笑った。 すると、孝太は苦笑する私を指差した。 「? 何?」 「蝶子のはいいのか?」 (しまった!) 私は最近『岸美容室』に行っていなかった。 「れ、麗子、さん?」 「そうね…」 前へ |次へ |
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