《MUMEI》
ラプンツェル
”此処から出たいの”

高い高い塔の上。
鎖に繋がれ、彼女は言った。

”出られないのよ”

羽根をむしられ、
足枷つけて、
目隠しされて、彼女は言った。

切られてしまった長い髪。
塔の窓には鉄格子。
塔の鍵は意地悪魔女が。

このまま一生籠の鳥。
きっと彼女は出られない。



可哀想なラプンツェル。




だけど彼女は気づいていない。



繋がれた鎖。
邪魔な目隠し。
重い足枷。
窓の鉄格子だって本当は無いのに、


彼女はあると思ってる。


むしられた筈の背中の翼。
切られた筈の長い髪。
本当はちゃんと元のまま。


意地悪魔女なんていやしない。

塔の鍵は彼女が持ってる。



自分で自分を閉じ込めて、
自分で自分の自由を奪った。

自分で自分を貶めて、
自分で自分の可能性を奪った。



彼女はまだ気づいていない。



”此処から出して!”



ほらね。
自分の足で出ていけるのに、
彼女はまだ気づいていない。
彼女はまだ気づかない。



可哀想なラプンツェル。



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