《MUMEI》 ガン見を続けるデイビスの問いを、アランは朝刊に目をむけたまま切って捨てた。 「え、そうかぁ?なんでわかるのさ」 「…お前、テニスの腕はぐんぐん上がるのに、いつまでたっても男を見る目は養われないのな」 アランはため息混じりに新聞から目をあげる。普段なら好奇心旺盛な瞳は今、この友はどうしようもねぇな、と言わんばかりだ。 「うるせっ」 アランの態度にデイビスはムッとした様子。 「ストレートと“こっち”の見分け方のが、一般的にはテニスよりよっぽど難問だよ」 拗ねてひとりごちるデイビスに、アランは面白半分、真剣半分で油を注いだ。 「いや、デイビス。お前は一般的にもあからさまに鈍い」 「ほっとけ!」 デイビスの言葉と同時に、アランの隣で寝ていたボサボサの黒髪がむくっと起きあがった。 前へ |次へ |
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