《MUMEI》

 中は綺麗に片付けられ、家具が入れられていた。薄いカーテンがかかる窓際に備え付けられたカウチ。一揃いのテーブルセット。そして部屋全体を満たす、元物置の荒削りな独特の風合い。ちゃんとした一室として機能するようになっている。

「ティアナ、ここは…」

「頑張って綺麗にしたのよ?…あなたの書斎として使って」

 これは、物書きのジェイクには思ってもみない贈り物だった。小説を書くには、この部屋はなかなかに想像力を掻き立てる。

「本当に、…本当にありがとう!」

 嬉しさのあまり、ティアナを抱き締めた。

「あなたの喜ぶ顔が見たかったの。早くここにも慣れてほしいし」

 ティアナの腕が背にまわる。そして幸せな微笑を浮かべ、ジェイクの耳元に囁いた。

「ここで、私達ふたりの生活が始まるのよ……」

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