《MUMEI》

その夜。昼間の出来事が気になって仕方がなかったジェイクは、ベッドの中でティアナにそれとなく切り出した。

「隣の家に住んでるのは男性二人?」

「ええ、そうよ。ベックとテオね。親切な人達よ」

「二人は、…ゲイカップル?」

 少しためらいがちなのが口調に表れてしまった。

「そうだけど、…何かあったの?」

「ん、…実は、見ちゃったんだ。二人が、庭のプールでセックスしてるの」

ティアナの表情に興味深げな色が差す。

「へぇ、どんな風に?」

「金髪の中肉中背の人と黒髪の中性的な子が、キスしながら服を全部脱いでプールに入って行ったんだ…」

(中性的?確かにベックは濃い焦げ茶色の髪だけど、中性的かしら…?)

 人違い、もしくは見間違いな気がしたが、話に水を差すのは興醒めだ。敢えて指摘するのは後にしよう、とティアナは考えた。

「……ねぇジェイク、そこから先は再現してみせてよ」

 誘うようにティアナはジェイクにしがみつく。

「……そうだなぁ、確か…」

「あんっ…」

 彼は覆い被さり、彼女の要求に応じることにした。

 夜は更けていく。
 昼間の、あの黒髪の男の妖艶な姿が、ジェイクの脳裏に焼き付いて離れず、なぜかそれが彼の本能を煽るようだった。

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