《MUMEI》

「…俊彦には触れるか?」

「?うん」


孝太の言葉に、私は首を傾げながら、頷いた。


私は、足を『触られる』のには抵抗があるが、俊彦に触れるのは嫌いでは無かった。


(むしろ、安心するし)


「ちょっと孝太。まさか蝶子に騎乗位させるとか言わないわよね。
蝶子は初めてなんだから、そんな難易度の高い体位させないでよね」


「まさか」


「えぇと…何の、話ですか?」


何か、麗子さんからすごい単語が出た気がする。


「「こっちの話」」


?


それから、二人は何故か小声で何かを確認し合っていた。


何だかわからないけど、二人は、楽しそうに…見えた。


「蝶子、今日は『リハビリ』の日?」


麗子さんの言葉に私は頷いた。


「俊彦がトイレに行こうとしたらな…」


孝太が私に説明した。





「む、無理! そんなの!」


真っ赤になる私の肩に、麗子さんが手を置いた。


「たまには俊彦に尽くしてあげなさい。
…可哀想だから。

喜ぶから、絶対」


「や、あの、でも…」


想像しただけで、死ぬほど恥ずかしい。


「大丈夫だ。素質はある」

「何それ!」


(何を基準に…)

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