《MUMEI》

私が抗議すると、孝太は意味不明な事を言った。


「チョコバナナを食べるの見てて、確信した」


ーと。


「な…」


「もう、行け」


真っ赤になる私に孝太が告げた。


「俺は、大丈夫だから、とっとと、俊彦の所に行け」

ーと。


「私は?」


麗子さんが質問した。


「今日は、もう、いいぞ」

「…また来いって事?」


孝太は答えなかった。


「とにかく、今日はもういい。

…悪かったな、心配かけて。

それから…」


「な、何?」


孝太が私を見つめるので、私はまた変な事を言われるのではないかと身構えた。

すると、孝太は笑って


「明日は、ゴマの方がいい」


と言った。


私は、ホッとして、『わかった』と言って、麗子さんと一緒に孝太の部屋を出た。


「私、もう少し頑張ってみるわ。

…あんな奴だけど、まだ好きだから」


帰り際、麗子さんはポツリと言った。


私にと言うより


自分自身に言い聞かせるように…


そして、私と麗子さんは、『クローバー』の前で別れた。


私は、軽く遅めの昼食をとり


俊彦の所へ


『シューズクラブ』へ向かった。

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