貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
向日葵
お供が寝た。

そろそろ行くか。墓の下に眠る死者の安息のために。

「ちょっと出かけるけどすぐ戻るから…おとなしく寝ててよ?」

夢の世界へ飛び立ったお供に言ってみる。

勿論返答はなかった。

よし、これなら大丈夫だよね…。

大丈夫じゃなかったらどうするつもりだったのだろうか。

沙羅はゆっくり部屋を出る。
音をたてないように慎重に宿から借りた部屋の鍵をかける。

カチリ
そして足早に宿を出た。

今回無空間から出た場所は、またまた戦国時代の町だった。

城下町なので昼間は騒がしかったが。

「えーと、‘花雪’ってお店だっけ」

花雪の暖簾(ノレン)、または看板がある店を探す。

「あ、あった」
ボロいな〜。
なんだか潰れてしまった店のようだ。

「すみません、えっと…店主のユキトさんいますか?」

中に入って聞いてみる。「何か御用かな?ユキトはワタシですが」

いた!

「えぇ。あの、この町の人から聞いたんですけど、種屋さんで夜しかやってないって……」

ユキトさんとは老人だった。
優しげな人だ。

「何につかう種かな?花か、樹か?」
「花でお願いします。その……できれば、供えるのにいい花で」

今日、町に入る前、墓を見つけた。
そこで五がこう言ったのだ。

「ねぇシャラ。明日またここに来て、五お花の種埋めたいなぁ(五)」

「花じゃなくて?」

と聞いたら、こう返ってきた。

「だって、種を埋めておけば、シャラもみんなもまた来たくなるでしょ?だから……(五)」

この墓に、人気がないからだろうか。

五の言葉に四がつけたした。

「いい考えです!!また四達が来ればお墓の人も寂しくないと思います!シャラさまぁ、いいでしょう?(四)」

彼らの優しい気持ちなのだろう。
賛成だ。

「いいよ」

「若干派手な花ですが、明るくて、供えるには逆にいいんだよ」

そう言って見せてくれたのは向日葵の種だった。
「ここらは暖かい事が多いのでぴったりだ」
「ありがとうございます。どうして…ここらだってわかったんですか?」
ユキトさんが薄く笑った。何か変な所でもあったのだろうか?
「ワタシが夜しか店をやらないのは、あの墓に昼間の間行ってるからなんだよ、さあ、もうすぐ夜明けだから帰りなさい」あの時見てたのか。


「シャラ埋めたよ。(五)」

今日は晴れていた。太陽が眩しい。
「うん。ユキトさんがお水やってくれるって言ってたし、そろそろ行こうか」

うん!と頷いてお供がはしゃぎながら走り出す。
沙羅は種を埋めた土を背にしてお供に続いた。

あの墓は、戦死者の墓と後からきいた。

向日葵の花が咲く頃に。またここに来よう。

顔も知らない死者のために……向日葵が、僕らを待ってる。


死者の安息を、
向日葵に託す。
生まれ変わる、その時まで
どうか安らかに


言霊導〜短編番外〜
<向日葵>終

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