《MUMEI》

大学のある都心から電車で約2時間、海の見える大きくも小さくもない町が私の地元だ。



家から自転車でたったの5分、その塾の名は『ジョイゼミナール』という。


こじんまりした掘っ建て小屋で、塾長の杉浦先生(50過ぎの可愛いおばさん!!)が一人でバイト講師達を取り仕切っている。

小さな部屋が真ん中の薄い壁で2つに分けられ、椅子と机が9セットずつ置いてある。


月謝が破格値なのに赤字にならずに10年も続いている訳が、部屋の内装からなんとなく伝わってくるだろう。






私にとって『ジョイゼミ』は第二の家だ。



中学時代から絶えず両親が喧嘩していたので、そのとばっちりを避けるために行くというのがほとんどだった。


はっきり言って勉強のやる気なんてこれっぽっちも無かった自分を、本当の子供のように受け入れ、学ぶことの楽しさを教えてくれた杉浦先生………





自分もそんな先生になれたら…と、ひそかな野心を抱きつつ、私は“先生”として初めて入口のドアを開けた。

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