《MUMEI》 2nd.ステージ「恭介あの右45どう思った?」 「なんか…おしいって感じかな。シュート自体は速いんだけど、変なタイミングで打ったり、後半は積極性にかけて、ほとんど打って来なかったし。」 「うん。僕も同じようなこと思ったんだよね。」 「…で?」 「あいつのシュートフォーム。肘が曲がってた。」 「それが?」 「あれは、野球の投げ方だ。ほとんどのハンドボールの選手は肘を伸ばして打つからね。」 「あ!!だから昨日野球部出身ってわかったのか!!」 「まぁね。」 「それが気になったの?」 「いや、それは昨日の時点でわかってたけど、問題はなんで後半になるとシュートを打とうとしないのかってこと。」 「でも昨日は試合やんなかったじゃん。」 「4対4でさ。最後あいつ、がっつり僕にマーク付いてんのにパスしてきた。あれはビビってシュートから逃げたんじゃないかと思って。」 「ビビって?」 「…ヤマも翔太も恭介もさ。中学からハンドボールやってたからわかんないと思うけど、高校から始めるのって大変なんだよ?」 「…」 「ここでシュート打っていいのか?パスしなきゃダメなんじゃないか?って、わかんないことだらけでさ。だんだん慣れていく内に自信がついてきて、出来るようになる。」 「あいつは自分に自信がないってこと?」 「そんなとこ。」 「いや、でも練習してればある程度自信なんてつくもんだろ。」 「普通ならね。だけどシュートがなかなか入らなかったりしたら自信もつきにくいと思う。」 「…そうか村木。」 静かだった先生が口を開いた。 「たぶんですけどね。」 「は?自分よくわかんないんすけど。」 「あの村木?とかいうキーパー上手いもん。昨日ヤマのシュートだって止めた。だったらまだほとんど経験積んでないあの右45のシュートだって止めてるでしょ。」 「あ〜、なるほどね〜。」 「しかも、ユキヒロが試合久々にやるって言ってた。てことは村木以外のキーパーとはほとんど練習したことがないんだよ。」 「お前すげ〜な。」 恭介が言った。 「まぁね。凡人にしかわかんないこともあんだよ。」 話してる内にタバコが随分短くなった。 「あ〜、もったいね。」 火を消して捨てた。 「まぁそういうことですから、これからいっぱい試合組んであげれば強くなると思いますよ。」 「小太郎。…それはできない。」 「?」 前へ |次へ |
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