《MUMEI》
何で?
「――日高、今日は俺奢るからさ、――スタバ寄ってかね?」
やっとこ授業も終わった。
やっぱ長沢の事日高に相談しときたいし…
「――うん、そうしたいのはやまやまなんだけど…遠慮しとくわ」
「!!何で!?俺の奢りなんだぞ?」
奢りに弱い万年金欠日高らしくのねー…つか誘い断られたの初めてだった。
しかも心なしか怯えて見えるのは気のせいか?
「――だ、だって…後ろ…」
「へ?」
――振り返ると
「なっ!なっ、長沢っっ?」
思わずうわずって変な高いキーになっちゃった!
そんな俺に長沢は極上の笑みを浮かべてきた。
「――聖、一緒に帰ろう?」
「――イヤだって言ったら?」
長沢は一瞬無表情になったが、またわざとらしい満面の笑顔を作った。
「俺と帰ろうね」
――一瞬の無表情、それがめっちゃ怖くて、俺は表情が固まったまま凍りついた。
整った甘いフェイスに長めの前髪。
そこから見える切長の少しつった、黒の強い眼が異常に怖かった。
日高がお先に〜と小言で吐くとそそくさと俺達から離れて行った。
▽
「帰ろう」
「――――――」
俺は観念して長沢の後ろをついて行った。
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