《MUMEI》 帰省私は今年度の仕事を片付けて、その足で東京駅に向かった。 そして私を乗せた新幹線はゆっくりと動き出し、見慣れた東京の景色が過ぎ去っていく。 外の景色を眺めながら千夏の言葉を思い出す。 『いつ帰国するか分からないって・・・』 そんなの知らないわよ・・・ 『このまま会えないかもしれないよ・・・』 だから? 佐久間さんと私はただの割りきった関係… お互いに恋人がいるのに、会ってどうするの? それに…佐久間さんのせいで私がどれだけ怖い思いをしたと思うのよ・・・ そう思いながらも、 佐久間さんが何かをした訳じゃない・・・ と、思う気持ちもあった。 『このまま会えないかもしれないよ・・・』 再び千夏の言葉が繰り返し頭の中で響く。 いいのよ・・・ 会ったって話すことなんてないもの。 このままでいいの。 私は・・・ 太一と・・・ 前へ |次へ |
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