《MUMEI》

一旦唇を離した俊彦が、舌を出しながら、質問してきたので、私は無言で頷いた。


俊彦は小さく笑って、また唇を重ねてきた。


私が軽く唇を開くと、すぐに俊彦の舌が入ってきて、私の舌を捕えた。


最初は逃げたり戸惑ったりしていたが…


「…んっ…」


最近は、私なりに、俊彦に合わせて舌を動かしてみる。


恥ずかしい音には、まだ慣れないし。


「…ハッ…」


俊彦より先に、息も上がってしまう。


(段々、長く、なるし…)


相変わらず、俊彦とのキスは、ドキドキするし、クラクラした。


「ん〜、…」


今日は、特に長いような気がする。


私は思わず俊彦の背中を叩いた。


俊彦がようやく唇を離した。


(…もう)


私は息を整えながら、だらしなく流れてしまった口の端の唾液を拭いた。


私ほどではないが、俊彦も、気持ちを落ち着けるように、息を大きく吐いた。


「段々…うまくなるね」


コツンと、私のおでこに自分のおでこを当てて、俊彦は嬉しそうに言った。


「…俊彦には、敵わないけど」


多分、一生敵わないと思いながら言ったのに、俊彦は『わからないよ?』と言って笑った。

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