《MUMEI》
帰り道
「――なあ、何なんだよ一体!」



「だから、俺は好きなんだよ、聖のこと」



長沢の奢ってくれたアイスキャンディかじりながら俺達は並んで歩く。



「――俺の気持ちとかは無視でそんな事言うなよ…」


「――怒ってんの?」



長沢はそう言い、ふと立ち止まった。


「――怒ってないと思ってんなら俺はこっから一人で帰る」

身長の違いすぎる長沢を頑張って見上げながら言う。



長沢はひたすら黙ったまま、あまり感情が入っていなさそうに俺を見つめていた


が、ふと優しく表情を変えた。



「――一緒に帰るってもう決めたからダメ」





「は…?」



「俺は聖と帰る、今日は朝まで一緒にいるって決めてるし」


――は?




「明日から三連休だしね!いっぱいセックスしていっぱい一緒にいよう」


――はい?



「あ、心配いらないから、俺マンションに一人暮らしだから気兼ないからさ」


――だから!




「ちなみにうちさ、隣のピアノの音聞こえない位壁厚いからさ、エロい声出し放題だからね」





―かぷっ!!



「ハギャア゛ッツ!!」




いきなり耳かじられて飛び上がるとギュッと胸の中に入れられた。


同時に長沢の体温と僅かな汗の匂いが俺に襲いかかり…





――――もう俺は!


「バカっ! 離せよっ!バカな〜が〜さ〜わ〜っつ!!」



「フフッ、聖ってば俺に抱きつきながら 離せだって!もうお前堪んねーよ!あ〜もうこの場でい〜からセックスしてえッ!!」




「違うっ!何で!
もうイヤだ〜〜っ!」
パニクって間違えて抱きついてしまった(多分…)―― 間違いだって!!




「丁度いい!タクシーだ!!」




長沢は、俺を抱えたまま数回ジャンプした。




すると目の前に一台のタクシーが停まった。




あれよあれよという間にタクシーに押し込められ長沢は「経堂の〜〜」と行き先を素早く告げた……。








――うーん何で俺はタクシーに乗ってんだろ……





「――聖、俺のマンション着いたら直ぐに…ハメてあげるからね…」




耳元に突然そんな馬鹿な台詞を囁かれ、俺はハッとし、弾かれた様に逃げようとした…



が、ガッツリと力強く抱きしめられていて、しかもタクシーもガンガン飛ばしまくってるしで




「運転さん!コイツだんだん顔色が悪くなってきました!すみません!もう少し飛ばして下さい!」




―はい?



「頑張れよ兄ちゃん!いっぱい飛ばしてやっからなっ!それにしてもいいダチ持って良かったなあ〜」





―――…





――運転さん…それ俺に言ってんの?



いいダチって長沢の事言ってんの?











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