《MUMEI》 時間の使い方「…今日は何時まで大丈夫?」 「日付が変わるまでには帰りたい、かな」 咲子さんは朝帰りしてもいいと言っていたけれど、明日はお互い仕事もあるから、私は工藤家に帰るつもりだった。 「じゃあ、十時まで、一緒にいよう。 それでいい?」 俊彦の言葉に私は頷いた。 私達は、お互い社会人で仕事もある。 俊彦はそれをよく理解してくれていた。 「よし、じゃあ、時間は有意義に使わないとね。 二階、行こう」 そう言って、俊彦は書類を引き出しに閉まって立ち上がり、手を差し出した。 私は頷いて、その手を取った。 この後は、夕飯を作って一緒に食べて、 それから、リハビリの予定だった。 「どうした?蝶子」 「え?」 「顔、赤い」 「そ、そう?」 私は、孝太と麗子さんの言葉を思い出していた。 「そういえば、孝太からさっき連絡入ったよ」 「え?」 「明日から出勤するって… 聞かなかった?」 「ううん、聞いてる」 動揺している私を見て、俊彦は不思議そうな顔をした。 「孝太と何かあった?」 「な、無いよ」 … 「蝶子」 「…リハビリの時に言う」 前へ |次へ |
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