《MUMEI》
早めの夕飯
誤魔化しきれない私は、小声で答えた。


「…何で今じゃないの?」

「だって…」


恥ずかしくて、とても言えそうに無かったから。


だから、『その時』に言おうと思った。


(怒ったかな?)


俊彦が無言になったので、私は繋いでいた手をギュッと握った。


「…ちゃんと、言うから。嫌いにならないで、ね?」

孝太と麗子さんは『俊彦は喜ぶ』と言った。


「頑張るから」


私が俊彦を見つめると、俊彦は、不思議そうな顔をして、私を見つめた。


「嫌いには、ならないから」


俊彦はそう言って、私の頭を撫でた。


それから、私達は早めの夕飯を食べた。


俊彦は、お昼は軽く済ませたそうで、私の作った夕飯を沢山食べてくれたが、私はお昼が遅かったので、あまり食べられなかった。


「雅彦が食べるから、大丈夫だよ」


「雅彦といえば、…いつもどこに行ってるの?」


運動会の時も、私達が付き合い始めてリハビリをしている時も、雅彦はいつも出かけていた。


最初は気にしていなかったが、さすがに毎回なので、気になり始めていた。


「あれ、言って無かったっけ?

雅彦、結子と付き合ってるんだよ」


「えぇ?!」

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