《MUMEI》

俊彦が大好物のオムライスの最後の一口を食べてから、あまりにあっさり言うから私は驚いた。


「聞いてない!い、いつから?」


「運動会の日から」


それは、ほぼ私と俊彦が付き合い始めたのと同時だった。


「だって、皆何も言って無かったよ!」


私は商店街の誰からも、雅彦と結子さんの話を聞いていなかった。


「雅彦が最終種目で結子を選んだ時から、皆気付いてたし。
誰か言うと思ってたんじゃない?
又は、蝶子と雅彦仲いいし、もう知ってるとか思われたのかも」


「仲いいって…」


私と雅彦は、幼なじみで、『シューズクラブ』でも私の担当は雅彦だが、そういう恋愛話はしたことは無かった。


「大丈夫」


?


(何が?)


「蝶子が好きなの俺だってわかってるから」


俊彦があまりに嬉しそうに言うので、私は『そう』としか言えなかった。


二人の事は、口下手な雅彦からではなく、後日結子さんに訊こうと思った。

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