《MUMEI》 ◇◆◇ 「───────」 咲弥を寝床へ運び込むと、黒蝶は独りのんびりと月を見上げる。 (なかなかいいもんだな‥) 漆黒の瞳はそれを映し、輝いているかのように見える。 何を思ったか、突如としてその女は邸の屋根に飛び上がった。 高い位置で束ねていた髪を下ろすと、ゆるりとした風にそれを靡かせる。 再び邸の庭に、静かな雨が降り始めた。 だが気にも留めない様子で、黒蝶は屋根の上に佇んでいる。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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