《MUMEI》
10月6日(前編)。
『聞きたいことって何ですか?』




僕は動揺を隠すように強気な態度にでた。




『先日の暴行事件と放火殺人についてです。』




刑事と名乗る男はさらに強気だったため、その迫力に完全に負けた…。




『…わかりました。』




警察署は、やけに慌ただしい。




まぁこんな田舎の町で事件が続けばこんなもんか…。



……これで僕が捕まれば、ここも自然と静かになるだろう…。




そんなことを考えていた。




『こちらへどうぞ。』




一番奥の取調室に入れられた。




『…で、聞きたいことって?』




僕は白状する気で腹は決まっていた。




『実は…ここ数日の事件の犯人の手がかりが全く無いんです。
この二件の共通点が“被害者の職場”でして…
それで同じ工場にお勤めの方々に一人づつ、何か心当たりがないか事情聴取させてもらってるんですよ。』




刑事のあっけらかんとした口調に驚いた。




“何だよ…ビビらせんなよな…。”




『…そうですか。大変ですね。残念ながら僕は何も知りません。犯人の心当たりもありませんよ。』





“…よしっ。バレてない。”そう確信した。




『…そうですか。では…何かお気づきのことがあれば署までご連絡ください。今日はお忙しいところすみませんでした。』




『…わかりました。』




“なんだ、やけにあっさりだな…。”




僕は警察署を後にした。




その足で飲み屋街へ行くのも早すぎたので、しばらく町で時間をつぶした。




気が付くと、暴行事件現場に来ていた…。




その後は放火殺人現場…。




“やっぱり僕のせいかなぁ…。”




さすがに罪悪感…。




やっぱり家に帰ろう。




家に帰るとポストの中に沢山の紙切れが入っていた…。




“…なんだこれ?”




…領収書?




居酒屋が三軒…カラオケボックスにラーメン屋…?




マジかよ…全部今日の日付の領収書じゃん…。




慌てて家に入り通帳を確認すると…。




“…やっぱり。”




残金9600万円になっていた。




“100万も使ってんじゃねぇよ…。”




もう残金すべて使わねぇと誰かにどんどん使われちまう…。




そう思った時思い出した。




“…あっ。たしか明日の日記には…。”




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【2008年10月6日】一億円もあるのにチミチミ使っててもしょうがねぇ。今日全額使うぞ。
高級料亭・マッサージ・貸し切りプール・キャバクラ・風俗…ありとあらゆる贅沢を思いつくままやりまくった。
やっぱ世の中…金だな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




“またコレも誰かに実行されておしまいかよ…。”




どうせまた、この通帳から金だけひかれて僕は何もいい思いできないんだ…。

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