《MUMEI》

東京に戻る前に、もう一度父親の入院する病院を一人で訪れた。




「病院での年越しはどうやった?」


「これはこれで良い思い出になったで」


父親はにこやかに言う。


「そう…なら良かった」


父親にとって最後のお正月が病院で過ごすことになるかもしれないと思うと、なんとも言い難い気持ちになった。


「まぁ…気長にのんびりと病気を治しや…」


「急になんやねん!?」


父親は笑い飛ばす。


そんな父親の言葉を無視して大晦日の決心を伝えた。


「私な、結婚しようかと思ってんねん…」


「えらい急やな…」


さすがの父親も娘の告白に少し驚いている。


「実はプロポーズされてて悩んでたんやけど…受けようかと思って…」


「まさか…お父さんの病気のことを思ってとか、ちゃうやろな?」


鋭い父親の質問に、


「自分の人生やで!そんなことで決めへんわ」


と、一蹴した。

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