貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》安息のひととき
無空間から出た場所は江戸の城下町だった。
とりあえず泊まる所を探していた。
金には随分余裕があるので、少しいいところに泊まっても、罪はないだろう。
2日間も野宿だったのだから。
「あ、沙羅殿。温泉宿がありますよ(三)」
三が温泉宿の看板を指差して言った。
「あ、ホントだ。じゃあここにしようか」
温泉とは久しぶりだ。
アヤメと記された暖簾をくぐり、中へ入る。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
明るく出迎えてくれたのは多分、女将さんだろう、意気がいい。
「5人です。」
人数を伝えるとはいっと答えて部屋へ案内してくれた。
「星ノ間と言う部屋です。この部屋をでた所にある廊下をまっすぐ行って手前の別れ道の右に行くと大浴場がありますので。今の時間は誰もいないので貸切状態ですよ。良かったら行って見てくださいね」
貸切か…。
「ありがとうございます。後で行ってみます」
そう返事すると女将さんは頭を少し下げて部屋を出た。
「沙羅!温泉行こう!!温泉!(六)」
お供がはしゃぐ。
「じゃあ行こうか。みんな用意して、ちゃんと浴衣持った?」
確かに。
大浴場は全く人気がなく貸切状態だった。
「うー、気持ち〜」
湯の中で手足を伸ばす。沈みゆく夕陽がなんとも綺麗だ。
こんな時にとてもホッとする。
何だか全てに感謝している気分だ。
「そろそろ上がろうか、のぼせちゃうし」
もう少しいてもよかったのだが、お供の事を考えると、上がった方が良さそうだったのだ。
浴衣はとても歩きづらい。
いつも着ている物と全く違う作りなので。
「失礼します。あの、星見に行かれてはと思いまして。」
満たされた胃が、少し重い気がする中、女将さんがやって来て、星見とやらを教えてくれた。
「星見?」
「えぇ、もうすぐ流星群が来るんです。皆見に行くので、お客様もどうかと…」
なるほど、流星群か。
行ってみたい。
「へぇ…おもしろそうですね。もうくるんですか?」
「はい、もう来ます」
行くしかないだろう。
お供は行く気満々だ。
宿から借りた下駄がカランカランと音をたてる。
まるで夏祭り気分だ。
「あっ!!シャラさま!あそこ!(四)」
四が差した方向に流星群が流れだした。
「すごい……」
それしか言葉がなかった、あぁ、これを人は心の安息と呼ぶのだろう。
夜と言う暗闇に数多なる星星が、流れてゆく。
例え周りが騒がしくとも、心に安らぎを感じたらそれは、安息と言うものなのだろう。
少年は学ぶ。
この空の下で、人が歩いていて気づかないものを、旅する事で。
少年は、運命に押しつぶられそうになった時、ふと気づく。
心休まるとき、
人は全てを忘れ、
安息と言うひとときをとても永く感じるのだと。
言霊導〜短編番外〜
《安息のひととき》終
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