《MUMEI》

「そうかぁ…。お前が自分で決めたんなら、ええんちゃうか…」


父親は安心した顔をした。


「相手は例の佐久間さんやろ?」


私はドキッとしつつも、


「それは会ってからのお楽しみ…」


と、やんわり濁した。


「そうやな…楽しみに待ってるわ。はよ元気にならなあかんなぁ〜」


「気張ってあんま無理したらあかんで!」


父親に釘を刺すが、


「ほんま楽しみやわ…」


父親は嬉しそうに繰り返し言った。


そして私は…


「また近いうちに連れてくるから…」


と言って病室から出て、



ハァ……



ため息を一つついて、荷物を持ち直し京都駅に向かうバスに乗った。

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