《MUMEI》
イブの夜
今夜は大雪と言っていたテレビの天気予報は大きく外れた。窓の外は、快晴。満月でもないのに一等星さえもぼやけてしまう程の月明かりが、昨日溶け残った雪に反射してキラキラ光っている。
クリスマスイブの夜だからなのかは解らないが、いつものざわめきが嘘のように今夜はやけに静かで、まるで別世界にいるような感覚に陥ってしまう。

こんなに綺麗な夜に、僕は君と別れる。

いや、正確に言えば、フラれるのだ。

「きれい…」
君は、白い息を吐いて窓の外を眺めながら少し微笑んだ。月明かりに照らされたその横顔があまりにも綺麗だったので、僕はつい見とれてしまう。

「…愛してるよ…」

僕が小さく呟いた言葉に君は微かに頷いた。

時間が永遠に止まればいい。なんて大人が言う台詞ではないが、本当にそう願ってしまうのが情けない。
寒さに一瞬身震いした君は、僕の隣に座った。

「寒いだろ」
僕は、近くにあった毛布を取ってきて君の肩にかけてあげる。
「ありがとう。聡くんも寒いでしょ?」
そう言って、君は毛布の片側を僕の肩にかけた。

「あったかいね…」
君は僕に身体を寄せた。君の温もりを感じて、僕の頬を涙が伝うのが分かった。「…本当に…」
肩と声の震えで君も泣いている事が分かった。僕は思わず君を抱き締めた。
君は泣きじゃくりながら、頷いた。

君を失うことになって初めてこんなに愛してたと知るなんて、本当に僕は馬鹿だ。

夜が明けたら、君は…君は出ていってしまう。

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