《MUMEI》
復活
翌朝。


「おはようございます」


私は昨日孝太と約束した通り、ゴマと栗のパウンドケーキを持って、『シューズクラブ』を訪れた。


雨は降っていなかったが、私は俊彦と付き合い始めてから、配達を進んでするようになっていた。


咲子さんは、『愛の力ね』と言って、笑っていた。


「おはよう」


「あ…」


そこにいたのは、細身の黒いスーツ姿の孝太だった。

「これ、約束の…」


私は、孝太にケーキを手渡した。


「聞いたよ。…俊彦から」

「な、何の事ですカ?」


語尾が裏返った私を見て、孝太は『嘘だ』と笑った。

「酷いです…」


私は真っ赤になってうつ向いた。


「聞いてないが、わかる。異様に機嫌がいいから」


「孝太さんが帰ってきたからじゃないですか?」


私が言うと、孝太は『そうかもな』と言ってまた笑った。


「まぁ、ともかく、良かったな」


「…まだまだですけど」


「そうか?じゃあ、次は…」


「もういいです!」


私は慌てて言って、『シューズクラブ』を後にした。

その日、『シューズクラブ』は孝太のファンが詰め掛けたらしく、もう一度行った時、孝太はぐったりしていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫