《MUMEI》

私の言葉に越智さんは一瞬だけ「え?」といった顔をしながらも、すぐに戻り


「またまたぁ〜。佐久間からよく遊んでるって聞いてるよ!」


「そういう時もありましたけど…」


私は言いながら、


越智さん、何も知らないのかしら?


ふと頭の中をよぎった。




「最近は会ってないの?」


やっぱり知らないんだ…


「はい…一ヶ月くらい」


越智さんはまた少しだけ驚き、心配そうな顔をした。


「ケンカでもした?」


「そんなんじゃないです」


何も知らないであろう越智さんに、太一のことや上原に襲われたことを言う気にはなれなかった。


そんな私の気持ちを知ってか知らずか、越智さんは更に探ってくる。


「じゃあ…自然消滅?」


私は首を横に振り、


「私…佐久間さんみたいにいい加減で調子のいい人が嫌いなんです。だから…」

そこまで言うと、越智さんの言葉に遮られた。


「愛加ちゃん、佐久間のこと誤解してるよ…」

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