《MUMEI》

「…悪い。」

「…いや、いいけど。」

早いペースでまたタバコをくわえる。

「クロ。俺は…」



「お前が羨ましい。」

「何が…?」

「ハンドボールが出来る場所があっていいよな。」

「…ヤマ?」

「チームもある。」

「だったら…何でハンド部のある大学に行かなかったんだよ。」

「…お前とやりたかった。」

「は?」

何言ってんだ?

「中学の時から、俺はエースだったけど、ウチの中学は弱小だった。」

…そういえば、昔そんな話を聞いたことがあるような気がする。

「チームメイトは、やる気のないやつばっかでさ。」

そうだ。

「高校に入って、やる気のあるやつらを見つけた。」

僕は以前…

「でも、俺のプレイに合わせられるサイドはいなかった。」

この話を聞いたことがある。

「このコンビニで、お前を見つけるまでは。…今更、やっと見つけたパートナー以外のサイドとなんてやりたくないよ。」

僕より上手いやつなんて山ほどいるのに…

「俺がお前をハンド部に誘ったわけだしね。」

「…入ったのは僕の意思だよ。」

「クロ。お前があんなに上手くなるとは思わなかった。」

ヤマのアドバイスのおかげじゃん。

「今のクロなら、コーチもできるって。」

「僕、経験浅いし…」

「翔太も、恭介も、もちろん俺も手伝うって!!指導者なしの状況で、あいつら引退させんのは、かわいそすぎだろ。」

「…確かにな。」

覚悟を決めた。

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