《MUMEI》

私は言われた通り、足を前に伸ばした。


「結構筋力ありますね!」

「そうですか?」


お世辞でも、少し嬉しくなった。


「じゃあ、次は…」


「あ、あの…」


「はい?」


伊藤さんは笑顔のままだった。


「…俊彦と、一緒に回りたいんで、待ってるか、見ててもいいですか?」


「…」


微妙な沈黙の後。


伊藤さんは女性インストラクターに声をかけ、俊彦を連れてきてくれた。


「これで、いいですか?」

「「はい、ありがとうございます」」


私と俊彦は、同時にお礼を言った。


それから、私達は伊藤さんに指導してもらいながら、様々なマシンを試した。


終わる頃には、丁度お昼近くになっていたので、私達は雅彦と結子さんと合流し、シャワーと着替を済ませ、スポーツジムを後にした。


雅彦だけは、もっとスポーツジムにいたいような顔をしていたが、結子さんには敵わなかったらしい。


「いや〜、スポーツジムも結構いいよね」


「だろ?」


「雅彦。絶対俊彦違う事考えてる」


「…」


結子さんの言っている事は正しかった。


俊彦が、ものすごく気に入ったマシンは二つあった。

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