《MUMEI》

「襲われかけたって…」


ついさっきまで大笑いしていた越智さんの顔から笑顔が消えた。


「あ……いや、なんでもないんです」


佐久間のせいだと言うつもりだったのに、今は言いたくなかった。


しかし中途半端に聞かされた越智さんは気にする。


「佐久間のせいって…」


「ごめんなさい!本当になんでもないんです。言葉を間違えました…ハハハ」


私は笑って誤魔化したが、越智さんは何か引っ掛かることがあるのか、


「その先輩って…佐久間のこと知ってる奴だった?」


と聞かれた。



私はなんと答えようか悩んだ末、



「佐久間さんのこと…人殺しだって…」



上原からの嫌がらせについて話した。



それを聞いた越智さんは、口を一文字にし…、とても難しい顔をして言った。


「今から言うこと…俺から聞いたなんて誰にも言わないって約束できる?」


意外な展開に私はドキドキしながら頷いた。

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