《MUMEI》
原因1
中はおよそ六畳ほどの広さで、布団が圧縮袋に入れて小さく畳まれていた。
他には何もない。
ただ部屋の端に下へ延びる階段があるだけだ。

「地下の地下にユニットバス?」

凜の言葉にレッカが「ああ」と答える。

「工事が大変だったらしいぜ。排水管とかさ」

「……だろうね」

凜と共に羽田も頷いた。
そして三人は部屋の中心に三角形を作るようにして座った。

「で、どうする?」

レッカは言って凜を見る。
凜は考えるように間を置いて答えた。

「とりあえず、なんで先生がこちらの世界しか見えなくなったのか、その原因を見つけるとか……」

「って言っても、どうやって?」

レッカは今度は羽田に視線を向けた。

「先生、いつまで元の世界が見えてたか分かりますか?」

「……たしか、あの雲みたいなマボロシに追い掛けられてた時はまだ見えてたような」

「で、いつから見えなく?」

「……わからない」

羽田が答えると、凜もレッカも腕を組んで考え込んだ。

「きっかけは、何だろうな? あの時は必死だったからあんまり覚えてないんだけど」

「わたしも、よく覚えてない」

言って、凜は視線を羽田に向けた。
しかし、羽田も首を振る。
三人はしばらく無言で考え込み、やがて凜が思いついたように口を開いた。

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