《MUMEI》

「そうだったんですか…佐久間さん、そんなこと一言も・・・」


「そりゃ悲しい過去なんて誰も話したくないよ…」



越智さんの言葉を聞いて大西課長を思い出した。



『そうね…もう10数年も経つのに。でも大分立ち直ったわ』



10年経っても・・・


佐久間さんも同じ気持ちだったんだ・・・


なのに私・・・


『佐久間さんの顔なんて二度と見たくないわ!』




「私・・・そんなこと知らずに佐久間さんにひどいこと言って、どうしよう…」


「仕方ないよ。経験した人間にしか分からない痛みだから…」


でも・・・


私の後悔する気持ちを遮るように、


「あ、それと・・・鎌倉に行ったのは、たぶん彼女の七回忌だよ。あいつは責任感じて、あぁいう節目には参加させてもらってるって言ってたから」


そうだったんだ。


じゃぁ・・・


「一緒にいた女の人は?」


「きっと彼女の双子のお姉さんだよ」


えっ!?


「双子???」


だから写真の女の人だと勘違いしたんだ・・・


さっきムキになって彼女がいると言い張ったことが恥ずかしくなった。


「安心した?」


越智さんがニヤッと笑いながら私の様子をうかがう。


「別に・・・安心なんて・・・」







したかも・・・

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