《MUMEI》 「愛加ちゃんは、やきもち焼きなんだね」 越智さんは嬉しそうだ。 「勝手なこと言わないでくださいっ!」 「いつまでも意地張ってちゃダメだよ」 意地なんて・・・ 『佐久間さん…年始にはエジプトに行っちゃうんだって』 あ・・・ 「そういえば、佐久間さんエジプトに・・・」 「あぁ、行くらしいね。たしか正月明けだって言ってたなぁ。あいつも大変だよな」 『いつ帰国するか分からないって・・・』 千夏の声が頭の中でこだまする。 「もう・・・会えないんでしょうか・・・?」 「は?」 「あ、なんでもないです」 そしてまた千夏の声が、 『いつ帰国するか分からないって・・・』 「愛加ちゃん、どうしたの急に?」 「いやなんでも・・・」 「佐久間にもう会えないなんて、何大袈裟なこと言ってんだよ」 大袈裟・・・? 『このまま会えないかもしれないよ…』 このまま会えない・・・ 「大袈裟なんかじゃ・・・」 「え?」 また頭の中の千夏の声が私に聞いてくる。 『このまま会えないかもしれないよ…いいの?』 窓の外を見ると、いつの間にか見慣れた景色に変わっている。 『いいの?』 いいわけないじゃない・・・ 私は越智さんに向きなおり 「私、駅についたら佐久間さんに会いに行きます!」 宣言した。 前へ |次へ |
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