《MUMEI》

その後も続々と参加者がやってきた。


村居のおじさん達を含めた『引退組』が今年から不参加になったということで、年齢層は意外と若かった。

それでも、タバコ屋のヨネおばあちゃんや、駄菓子屋の健蔵(けんぞう)おじさんを含む年配組も、未だに健在だった。


ただ、前半は割と穏やかな年配組が多く、後半は厳しい年配組が集中していた。

俊彦が意図的にそうした事は、誰の目にも明らかだった。


集合時間五分前になって、勇さんと、勇さんの兄の悟さんが軽装で現れた。


悟さんは、勇さんと外見は似ていたが、中身は正反対で、孝太と同じ位か、それ以上に無口だった。


そして、いよいよ出発…


俊彦がバスに乗り、人数を確認し始めた時


「待って〜!」


慌てて駅のロータリーを走ってくる一人の男性がいた。


「ま、間に合った!」


「遅刻だ」


そう言って俊彦は、汗だくの


集合場所に一番近い位置に住んでいる祐介さんの頭を叩いた。


祐介さんは頭を押さえながら、最後の空席に座った。

「よし!出発!」


俊彦の合図で、添乗員とバスの運転手が頷き、バスがゆっくりと動き始めた。


(楽しみだな)

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