《MUMEI》 それから私はピンクのチークを塗り、俊彦に巻き髪のウィッグをかぶせた。 (何か、私より綺麗かも…) 女装した俊彦を見て、私は複雑な気持ちになった。 「どんな感じ?」 「…いいと思うけど」 私は俊彦を部屋にある鏡の前に誘導した。 「グロス塗り過ぎじゃない?」 「そう?…んっ…」 俊彦の顔を覗き込むと、突然キスされた。 「うん、この位だね」 俊彦は、もう一度鏡を見て頷いた。 (もう…) 私の唇には、俊彦に塗ったピンクのグロスが付いていた。 「じゃあ、次は…」 「出来た?」 結子さんが雅彦を連れて出てきた。 「雅彦…」 「言わないで。わかってるから」 雅彦は、おそらく結子さんが特別に作ったロングスカートと、来る時も着ていた黒いタートルネックのトレーナーに、これまた結子さんお手製の、可愛らしいニットのベストを着ていた。 ちなみに、雅彦のウィッグは、セミロングのストレートだった。 外見は、離れて見れば少しがっしりした女性に、見えない事も無かったが… 雅彦の顔は、綺麗系の俊彦と違い、男らしいので、それは、メイクでも誤魔化しようが無かった。 前へ |次へ |
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